2020年1月23日木曜日

ハイゴケ科

ハイゴケ科(21属72種) <種一覧へ>


①ハイゴケ類 ②キヌゴケ類 ③クシノハゴケ類 ④ラッコゴケ類 ⑤イチイゴケ類

ハイゴケ科の特徴


・這って枝分かれするタイプ
・中肋は2本~ない(例外はヒメコガネハイゴケのみ。1本のことがある。)
・葉身細胞は線形で平滑(パピラがあるものはとても少ない)。
・細胞壁は薄い(例外:ダチョウゴケやフトハイゴケなど)
・翼部はよく分化する(例外あり:フクロハイゴケ属など)
・茎に毛葉がない(例外なし。毛葉があるのはイワダレゴケ科など。)
・偽毛葉を持つものが多い。
・蒴は傾く(直立するのは②キヌゴケ類の3属9種のみ)
・蒴柄は平滑(例外はイボエクシノハゴケだけ)
・腐木や岩上の苔が多く、樹幹の苔は少ない。

注意すべき別科


サナダゴケ科:いっしょに考えた方がいい。


グループ区分


葉が著しく鎌形に曲がる → ①ハイゴケ類
樹幹に生え、蒴は直立  → ②キヌゴケ類
葉は全周に鋸歯があり、帽に毛 → ③クシノハゴケ類
大形で、葉先が波状に屈曲する → ④ラッコゴケ類
おもに葉先がまっすぐなもの(サナダゴケ科も含む) → ⑤イチイゴケ類



識別形質


◆茎表面の細胞が大形薄壁なのか、小形厚壁なのか
観察しにくい面もありますが、変異はほとんどないと考えられ、とても重要な形質だと思います。大多数が小形厚壁で、大形薄壁になるのは、ツヤイチイゴケ属の3種、フクロハイゴケ属の4種、ハイゴケ属のうちのエゾハイゴケなど6種の計13種だけです。
◆偽毛葉の有無と形状
◆パピラ(細胞、蒴柄)
ハイゴケ科でパピラを持つものは稀です。パピラをもつものは、ヒラツボゴケ属(2種)、タカサゴイチイゴケモドキ属(1種)、ヒメコガネハイゴケ属(1種)のみです。
蒴柄にパピラを持つものはイボエクシノハゴケのみです。
◆翼部
細胞の形、数、色、細胞壁のくびれ、お椀状に膨らむか、
◆鋸歯
大多数は上部に微歯~ほぼ全縁。全周にはっきりと鋸歯がある種群(クシノハゴケ属)は特徴的です。
◆蒴の向き
蒴が直立するのはわずかです。ホンダゴケ属(1種)、イヌサナダゴケ属(1種)、キヌゴケ属(7種)のみです。
◆葉形や葉先
葉形は披針形や卵形がほとんど。
葉先は鋭尖頭のものがほとんど。
葉先が鎌形に曲がるもの:ハイゴケ属のほとんど、ダチョウゴケ、フトハイゴケ、ナガバラッコゴケ・・
葉先が波状に屈曲するもの:ラッコゴケ属
◆葉や枝の配列、角度、密度
扁平に出る。ランダムに出る。
◆帽の毛
帽に毛があるのはクシノハゴケ属だけ。
◆葉の長さ
茎葉と枝葉の大きい方で計測。とりあえずの目安になる。




①ハイゴケ類(3属21種) <種一覧へ> <マトリックス>


葉先が著しく鎌形に曲がるものです。
マトリックスはキヌゴケ類やクシノハゴケ類といっしょに整理しました。

所属する属


◆ハイゴケ属19種:目視でもある程度はわかるかも。
◆ダチョウゴケ属1種:密に羽状分枝。茎葉に深い縦皺。葉身細胞は厚壁です。
◆フトハイゴケ属1種:葉全体が溝状になります。葉身細胞は著しく厚壁です。

鎌形が弱い種もあります。逆に、この中になくて、鎌形に曲がるハイゴケ科もあります。
別の科にも鎌形に曲がる種はあります(カギハイゴケなど)。

ヒメハイゴケが今ひとつしっくりしないです。

識別ポイント


◆サイズと立地、枝(葉を含む)の太さ
◆分枝:枝が多いか、少ないか。
◆茎の表皮細胞:特に重要だと思います。
◆葉の縦皺:フジハイゴケやダチョウゴケのポイント
◆蒴の縦皺:エゾハイゴケやミヤマチリメンゴケのポイント
◆翼部:うまく取れません。工夫が必要かも。
◆細胞や中肋や葉形はイマイチ当てにならないような。


(大型のハイゴケ類)
ハイゴケによく似るのは渓谷の岩場に生えるオオベニハイゴケと、石灰岩に生えるチチブハイゴケですかね。この2つとは生育環境でまず区別します。その次に似ているのはヒメハイゴケ?。ヒメハイゴケとは環境が大事ですかね。
ヒラハイゴケはかなり違います。今は別属のようです。目視でほぼ見分けられます。
エゾハイゴケは最近ヤナギゴケ科になっているようですが、フジハイゴケによく似ていますね。
オオハイゴケは実態不明です。とりあえず無視です。

(中型のハイゴケ類)
ヒメハイゴケの実体が今ひとつわかりません。
この群が、ハイゴケ属の中で特に難しいかもしれません。

(小型のハイゴケ類)
山地帯でよく見られるのは、イトハイゴケですかね。
亜高山帯ではキノウエノコハイゴケとミヤマチリメンゴケですかね。
イトハイゴケとミヤマチリメンゴケはよく似ていますね。
サイトウハイゴケはよくわかりません。






②キヌゴケ類(3属9種) <種一覧へ> <マトリックス>


樹幹に着生して、蒴が直立するものです。
マトリックスはハイゴケ類やクシノハゴケ類といっしょに整理しました。

所属する属


・キヌゴケ属7種
・ホンダゴケ属1種
・イヌサナダゴケ属1種


ハイゴケ科の中では、特殊な種群だと思います。
まとまりはありますが、分類がとっても難しいです。
よくわかりません。






③クシノハゴケ類(1属7種) <種一覧へ> <マトリックス>


全周に鋸歯があって、帽に毛があるものです。
マトリックスはハイゴケ類やキヌゴケ類といっしょに整理しました。


クシノハゴケ属7種からなります。
クシノハゴケ属以外ではミチノクイチイゴケとキャラハラッコゴケにも全周に鋸歯があります。
帽に毛があるハイゴケ科は、クシノハゴケ類以外ではないように思います。
蒴柄にパピラがあるハイゴケ科もイボエクシノハゴケ以外にないような気がします。
この仲間は非常に難解で、まともな文献がありません。
平凡社の図鑑には9種と書いてありますが、5種しか載っていません。野口図鑑に載っているのは4種(そのうち絵があるのは3種)だけです。
アマチュアにはお手上げに近いです。
オニクシノハゴケは、茨城、埼玉、神奈川のリストに出ており、とても気になります。








④ラッコゴケ類(1属7種 <種一覧へ> <マトリックス>


葉先がしわよるかくびれるものです。中肋は長めです。
ラッコゴケ属7種からなります。
比較的大形で、山地の岩上などに生えます。
以前はフサゴケ科に所属していました。イワダレゴケ科に近縁だと思います。
マトリックスはイワダレゴケ科といっしょに整理しました。








⑤イチイゴケ類 <マトリックス>


サナダゴケ科の全種(種一覧へ)と①~④以外のハイゴケ科(種一覧へ)です。
サナダゴケ科は2属10種、ハイゴケ科は12属32種からなります。
葉先は普通まっすぐですが、鎌形に曲がるものも少しあります。


所属する属


サナダゴケ科
◆サナダゴケ属8種:ハイゴケ科のイチイゴケ類とよく似ている。偽毛葉を欠く。
◆エゾノヒラツボゴケ属2種:仮根は葉腋につき、パピラがある。偽毛葉を欠く。

ハイゴケ科
◆ヒラツボゴケ属2種:紐状で独特の姿。細胞の上下にパピラ。ウスグロゴケ科のネジレイトゴケにそっくり。偽毛葉は小葉状。
◆タカサゴイチイゴケモドキ属1種:かなり変わっている。茎葉の先端は切形で、対になった大きな鋸歯がある。屋久島以南。渓流の岩上に生える。
◆シロイチイゴケ属3種:南方系?。偽毛葉はは糸状で、1細胞列
◆アカイチイゴケ属3種:無性芽を着ける。偽毛葉なし。
◆ツヤイチイゴケ属3種:茎の表皮大形薄壁。ミチノクイチイゴケは美しい。偽毛葉はコガネハイゴケモドキだけ小葉状で、それ以外は欠く。
◆キャラハゴケ属5種:主要な種群。偽毛葉は小葉状。
◆キャラハゴケモドキ属1種:偽毛葉は小葉状。葉身細胞は22~30μm。
◆エゾキヌタゴケ属3種:翼部が長い。コモチイトゴケみたいで岩に生える。偽毛葉を欠く?
◆ミヤマハイゴケ属1種:棒状で変わっている。わかりやすい。偽毛葉は糸状。
◆ヒメコガネハイゴケ属1種:微小。北海道のみ。偽毛葉は小葉状。
◆クサゴケ属1種:大形。普通種。わかりやすい。偽毛葉は披針形。
◆ウシオゴケ属4種:南方系?。偽毛葉は小葉状。
◆フクロハイゴケ属4種:細胞が幅広で変わっている。茎の表皮大形薄壁。偽毛葉は小葉状。


識別のポイント


◆葉の出方:葉が2列で扁平に出るか、全周に出るか
◆葉の茎に対する角度
◆葉先の湾曲:下向きに曲がるか
◆乾の時の巻縮の程度:ミヤマサナダゴケはかなり巻縮します。
◆無性芽の有無や形状
◆偽毛葉の有無や形状
◆葉身細胞のパピラ:ヒラツボゴケ属など一部。
◆葉身細胞の幅、細胞の形:ミヤマサナダゴケの重要ポイント
◆翼部
◆鋸歯や葉先
◆茎の表皮細胞
◆蒴の縦皺:ツヤイチイゴケ属の3種のみ
◆茎葉と枝葉の違い:大きさの違い、形の違い


 <マトリックス>


全く未完成です。随時更新していきます。すみません。
マトリックスは、ほかの科も含めて全部エクセルで作成しています。大したものではありませんが、ダウンロード、加工、転載、オールフリーです。グーグルドライブで公開しています(こちら)ので、もしよかったら御自由にお使いください。
エクセルのフィルター機能が便利です。消去法で種を絞れます。








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